イーサン・ハント(トム・クルーズ)率いるIMFチームは、新兵器を探すミッションを下され、悪の手に落ちる前にそれを見つけ出そうとする。そんな中、IMFに所属する前のイーサンの過去を知る男が現れる。仲間たちと世界各地で命懸けの戦いを繰り広げるイーサンにとって、今回のミッションは絶対に成功させなければならないものだった。
2023年映画館での鑑賞14作目。 平日の午後の上映で、観客は30人くらい。思ったよりお客さんいるなあ、と。
2023年7月21日の公開日から1ヶ月半くらい経って、上映回数も減ってきたところで、ようやく観ることができました。
正直、160分を超える上映時間にやや尻込みしてしまったところもあったのです。
平日の仕事終わりに観るには、3時間近くなるとけっこう厳しい。
主人公がベテラン俳優だったり、世界各地を巡る「観光ムービー」的な面があったり、自動車や列車でのアクションシーンが売りだったり、『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』と被っているところが多く、公開時期も重なってしまったのは不運でもありましたが、僕はこの『デッドレコニング』のほうがずっと面白いと思いました。
実際に観てみると、アクションシーンなどは小ネタが散りばめられていて、ちょっと笑える場面もあって、なかなか洒落た映像で、飽きることはなかったんですよ。とはいえ、これと比べられたら、『インディ・ジョーンズ』は少しかわいそうに感じるくらいです。
ただ、ストーリーが、けっこう難解というか、散らかっているというか、「敵」が何なのかがよくわからないんですよこれ。
ネット社会の情報操作のリスクについて語られているのであろう、ということは伝わってくるのですが、それでいて、このPART ONEで争奪戦になるのは、物理的な「鍵」なんですよね。
そして、序盤の国の偉い人たちが、今回の「敵」について語っているシーンがやたらと長くて、しかも意味がよくわからない。
いや、僕は僕なりに解釈したつもりではいるけれど、それって、わざわざ鍵の取り合いしなくても、もっとスマートな解決法がありそうだとしか思えませんでした。外部のいろんな人が介在することで、ストーリーも登場人物もゴチャゴチャしてしまうし、そもそも、情報漏洩のリスクを考えると、外の人間を巻き込むことは害でしかなさそう。
その一方で、四半世紀(25年)くらい「インターネット」を見て、使い続けている僕は、ネットは目に見えないものだと思われがちだけれど、実際はサーバーとかケーブルのような「モノ」がないと成り立たないことも知っています。
スマートフォンやパソコンだって「モノ」ですしね。
最大の難点は、人間が質量のある物質であることかもしれません。
この映画、アクションシーンはよくできているし、トム・クルーズの見せ場も十分なのですが、「敵」を説明する部分のストーリーをはじめとして、そこはもっとシンプルにまとめてほしいところが情報過多で冗長、しかもわかりにくいんですよ。
今の時代にあった「敵」を設定しつつ、アクション映画としての見せ場も作らなければならない、というのは大変だろうけど。
ONE/TWOの2部作も、それだけのストーリーのボリュームがあるというよりは、製作費がかさんだので2作に分けたのかな、と邪推してしまいます。1作にまとめるのは難しかったのだとしても、つまらなくて難解な部分が引き伸ばされて、この人たちは何のために命を賭けているのだろう、という気がしてくるのです。
じゃあつまらないのか、と言われると、上映前の映像でトム・クルーズと監督が言っていたように「映画館の大スクリーンで観るべき作品」だし、料金分くらいの価値はある映画ではあるんですよ。
でも、上映前に話題になっていた、トム・クルーズがしっかりトレーニングをした上で自ら演じた崖からバイクでジャンプするシーン、劇中でみると「予想していたほど感動しなかった」のです。トム・クルーズが頑張った!という予備知識があるとそれなりに「すごい!……んだよなこれ」と感慨深いものがあるのですが、知らずに観たら、僕にとっては、さらっと流してしまう1シーンだったのではなかろうか。このCG全盛時代には、実際にすごいことをやっている映像の「本当のすごさ」を観客に感じてもらうのは難しいのかもしれませんね。『ジュラシック・パーク』で、でっかい恐竜が出てきたときの自分の感情が懐かしい。
うーん、あのジャンプシーンが象徴しているように、「手間もお金もかけてつくられた良作」ではあるのだけれど、力を入れるべきところが、微妙にズレているのだよなあ。
ただインパクトを与えるためだけに、観客にとって愛着があるキャラクターを雑に扱っているようにみえるのも悲しい。
と、例の如く批判的なことばかり書いたような気がしますが、『PART TWO』も観ないわけにはいくまい!と思いましたし、トム・クルーズさんが相変わらず元気に活躍しているのを観られて嬉しい映画でした。
今の世の中で、「スパイ(エージェント)が活躍するアクション映画」をつくることの難しさも思い知らされつつ。