琥珀色の戯言

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【読書感想】ワークマンは 商品を変えずに売り方を変えただけで なぜ2倍売れたのか ☆☆☆☆

ワークマンは 商品を変えずに売り方を変えただけで なぜ2倍売れたのか

ワークマンは 商品を変えずに売り方を変えただけで なぜ2倍売れたのか

  • 作者:酒井大輔
  • 発売日: 2020/06/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


Kindle版もあります。

【全編コロナ後、書き下ろし! 「ワークマン初のビジネス書」誕生】
作業服専門店がアウトドアショップに転身!?
商品を全く変えず、売り方を変えただけで2倍売れた、
「アパレル史上に残る革命」の舞台裏を渾身ルポ!

消費増税も、新型コロナ禍も、全く揺るがぬ右肩成長。
ワークマンはなぜ、強いのか。その強さは、本物か。
ビジネスモデルのすべてに迫ったノンフィクションの決定版が登場。

●新業態「ワークマンプラス」は、なぜ生まれたのか?
●「ワークマンを変えた男」とは?
●実は「データ経営」企業だった!
●販促費を全くかけずに売り切る秘策!?
●まだまだある「第2、第3のワークマンプラス」

初出し情報多数。
国内店舗数でもコスパでも「ユニクロ超え」を果たしたワークマン、
大躍進のカラクリを仕掛け人が独占激白!


 ずっと九州北部在住で、作業服を買いに行くこともない僕は『ワークマン』を目に留めることがありませんでした。
 もちろん、いままでの人生のなかで、何度も『ワークマン』の店舗の横を車で通ってきたはずなのですが。

 そんな『ワークマン』を意識するようになったのは、ここ数年間、『ワークマン』という会社や「ワークマン女子」がメディアで盛んに採りあげられるようになり、株価が右肩上がりで高くなり続けているのを目の当たりにしてから、だったのです。

 いやしかし、作業服の店が、なんでこんなに話題になり、一株1万円とかになっているんだ?

 この本は、その『ワークマン』の成長戦略について、そのキーパーソンである商社出身の専務の話を中心に紹介したものです。
 
 『ワークマン』は、1980年に群馬県伊勢崎氏で誕生しました。
 1号店は、わずか16坪(53平方メートル)の小さな店で、店の名前通りの「作業服の専門店」だったそうです。
 
 そんな『ワークマン』は、安さと機能性で、職人たちに圧倒的に指示され、店舗を拡大していったのですが、ある「挑戦」によって、急激な成長を遂げていくことになります。

 そのワークマンが、装いを新たにしたのは2年前だった。18年9月5日。東京都立川市のショッピングモール「ららぽーと立川立飛」に、新業態「ワークマンプラス」を出店した。それは、日本のアパレル史上に残る革命だった。作業服専門店が一夜にして、アウトドアショップへと変貌を遂げたのだから。マネキンやポップを多用した店構えは「本当にあのワークマンなのか」と目を疑うほど洗練されていた。これまでワークマンに見向きもしなかった一般客が、初めてワークマンという存在を「発見」した瞬間だった。
 ここから、ワークマンは怒涛の進撃を始める。店先には連日、入店制限をかけるほどの行列が延び、初年度売り上げ目標をわずか3ヵ月で達成した。それだけではない。ワークマンプラスが広告塔となり、既存のワークマンにも新規客がなだれ込んだ。2019年8月には既存店売上高が前年比154.7%と驚異的な伸びを刻み、その後も勢いは衰えない。「歴史が変わった」。古参社員が、思わずそううなるほどのうねりが列島中を駆け抜けた。
 ワークマンプラスを見たとき、誰もがこう思っただろう。ワークマンが、カジュアルウェアの新ブランドを開発した。ワークマンプラスという全く新しい店をオープンしたのだと。実際に、あまりのイメチェンぶりに、昔からのファンは衝撃を受けた。「悲報!俺たちのワークマンはどこへ行った」というつぶやきがネット上に飛び交った。しかし、そうではなかった。並んでいる商品は、すべて既存のワークマンで扱っているアイテムだった。
 そう、これは壮大な実験だったのだ。ワークマンプラスは、ワークマンが扱う1700アイテムに及ぶ膨大な商品群から、アウトドアウエアやスポーツウエア、レインスーツなど、一般受けするだろうと見た320アイテムを切り出したにすぎない。そのうえで、マネキンや什器を入れ、照明や内外装、陳列方法を思い切って変えた。つまり、ワークマンとワークマンプラスは同じ商品を扱う”同一店”だったのだ。
 しかし、それだけで売上げは爆発した。ワークマンプラスの売上高は、既存店平均の2倍に急伸。まさに商品を変えずに売り方を変えただけで2倍売れたのだ。


 今、ショッピングモール内のワークマンプラスでは、女性客が半数を超えるそうです。
 僕はいまだに「職人さん御用達」みたいなイメージが強くて、なかなかワークマンに入れないのに……九州には、まだお洒落な「ワークマンプラス」が少ない、というのもあるのかもしれませんが。

 「見せかた」「売りかた」を変えるだけで、同じ商品が2倍も売れるようになるっていうのは凄いですよね。

 ちなみに、「ワークマンプラス」の1号店を出店する際に、「作業服のワークマン」のイメージがあるからと、「ワークマン」という名前を消そうとしたことがあったそうです。
 ところが、外部から「『ワークマン』はプロの職人が愛用しているということで高品質をアピールできるから、絶対に名前を残したほうがいい」とアドバイスされたとのことでした。
 自分たちのブランドの価値というのは、内部からはよくわからないものなのかもしれませんね。

 もともと、ワークマンの製品というのは、安く売るために徹底的に原価を調整する一方で、商品をつくる工場とは長年の信頼関係を築き、つねに1年分くらいの在庫を持つようにしているそうです。
 また、安いからといって、機能的に妥協することもなく、「機能はすぐれているけれども、価格も高い」というアウトドアブランドと遜色ない防寒・防水のアイテムが、ずっと安い値段で買えるのです。

 ファッションの流行を追うことをやめ、「服はユニクロで十分」という人たちが増えてきている日本で、次に「安くて高機能」なワークマンがブレイクしたのです。


fujipon.hatenadiary.com


 ユニクロと同じで、「普段着がワークマンで何が悪いの?」という、みんなの共通認識さえできてしまえば、安くて丈夫で高機能な商品が支持されるのは当然のようにも思われます。


 『ワークマン』という企業は、昔ながらの伝統と現代的な合理性が、うまくミックスされているのです。

 ワークマンでは、店が親から子に受け継がれていたり(ただし、親子だからといって、無制限に継承されるわけではなく、親の代から店を手伝っている、近所とのつきあいをしっかりしている、などの条件を満たさなければ親から子への契約の引継ぎは許されないそうです)、職人さんたちの仕事の時間に合わせて、朝早くから店を開けていたり、といったことが続けられています。
 休みも少ないし、仕事はけっしてラクではなさそうです。

 社員には「データを読める」ことが求められ、そのためのしっかりとした研修が行われていたり、仕入れに関しても、人間の勘ではなくて、収集してきたデータに基づき、ボタン一つで自動的に必要な商品が納入できるようになっています。
 ネット上で、ブロガーやインスタグラマー、ユーチューバーなどに製品を紹介してもらう試みも続けているのです。

 ワークマンは全店舗の95%以上がフランチャイズ(FC)で成り立っている。加盟店募集ページには、次のようなフレーズが躍っていた。
「店休日(年間22日)4日増」「平均年収1000万円超」「7-20営業で、5分で帰れる」「契約更新率は99%」──。「年18日」だった店休日を、2019年10月から「年22日」に増やした。「今まで10月後半から、年内は休みが全くなかった。店休日がないという中で、2ヵ月以上無休で働くって、結構つらいじゃないですか。月1回ぐらいはお休みを入れようという発想で、店休日を増やしていった。そうじゃないと、身体がもたない」(ワークマン加盟店推進部長・八田氏)


 いや、それでもけっこうキツそうではありますよね。コンビニのような24時間営業ではないし、アルバイトの人に任せられる時間帯があるとしても。

 ワークマンの加盟店の契約方式には、6年更新のFC契約であるAタイプ(初期費用は高めだが、売れれば売れるほどオーナーの収入も上がっていく)と、1年更新の業務委託契約のBタイプ(初期費用は安いが、一定の売上げまでは固定給で、月商350万円を超えると「固定+歩合制」となる)の2つのタイプあるそうです。
 以前はBタイプが多かったのですが、最近はAタイプを選ぶ加盟店が増え、95%以上を占めているのだとか。

 Aタイプは、売り上げが伸びるほど、収入が増える仕組みだ。コンビニの場合は売れば売るほど、本部に支払うべきロイヤルティー(経営指導料)の割合が増え、取り分が減る。ワークマンはロイヤルティーが粗利の60%(オーナーの取り分は40%)と一定のため、稼げば稼ぐほど実入りが多くなる。実際に若いオーナーが経営する店舗では、初年度から年商2億円も珍しくないという。年収ベースで2000万円も夢ではない。「我々社員よりも全然稼いでいる」と八田氏は笑いながら、こう付け加えた。
「でも、それでいいんですよ。そうやって、加盟店さんが喜んでくれるのが一番うれしい。本当にこれがワークマン社員冥利に尽きる。(後略)」


 仕事はけっしてラクではないけれど、頑張って結果を出せば、その分ちゃんと報われる『ワークマン』。頑張っても本部に吸い上げられていくコンビニチェーンに比べると、「やりがい」はありそうです。もちろん、ワークマンの絶好調期が、今後もずっと続くかどうかはわかりませんが。
 売れてしまったがために、拡大に歯止めがかからなくなり、飽和したり地域内での競合が激しくなったり、といいうのは、『いきなりステーキ』に限った話ではありません。
 『ワークマン』は、現時点では、出店する場所については、かなり慎重に決めているようではありますが、これからずっとこんな右肩上がりの時代が続くということもないでしょう。

 なんで「作業服の店」が、こんなにすごいことになっているの?という僕の疑問に過不足なく答えてくれる本でした。
 

大人のワークマン

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