琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

ゆれる ☆☆☆☆☆

ゆれる [DVD]

ゆれる [DVD]

東京でカメラマンとして成功している猛(オダギリジョー)は母の一周忌で帰省する。彼は実家のガソリンスタンドを継いだ独身の兄の稔(香川照之)や、そこで働く幼なじみの智恵子(真木よう子)と再会し、3人で近くの渓谷に行くことにする。猛が単独行動している間に、稔と渓谷にかかる吊り橋の上にいた智恵子が転落する。 (シネマトゥデイ

 劇場公開時にかなり話題になっていた作品だったので、かなり期待してDVDを観たのですが、期待に違わぬ素晴らしい映画でした。いや、どちらかといえば(というか、圧倒的に、だな)稔(香川照之)に近いキャラクターの僕としては、自分に猛(オダギリジョー)のような弟がいなくて良かったなあ、と心底ホッとしたのですけど。「身内」だからこそ、他人には感じないような親愛の情があるかわりに、他人には感じないような歪んだ嫉妬心っていうのもあるのです。ストーリーを知ってしまうと面白さが半減してしまう作品なので内容に詳しく言及するのは最後の「ネタバレコーナー」だけにしますが、この作品、とにかく「役者力」が凄い!とくにオダギリジョー香川照之の2人は、ベタな表現なのですが「鬼気迫る」演技を見せてくれます。オダギリジョーなんてカッコいいだけじゃん、と思っていた僕は、これを見て役者・オダギリジョーをすっかり見直してしまいました。そして、香川照之さんは、「演じている」というよりは「実在の人物にとりつかれているよう」で、観ている僕の心もまた、現実とフィクションのあいだで「ゆれる」のです。

 先日『それでもボクはやってない』を観たこともあり、裁判でのやりとりに関しては、ちょっとリアリティに欠けるような印象はあったのですが(いや、「逆転裁判」みたいな感じじゃないですよ。あくまでも、あの『それでもボクは』と比べたら、という話です)、そんなにお金がかかっているわけでもなく、派手でもないのに、「日本映画って、日本の役者さんって凄いな」と観ているだけの僕にも自信を持たせてくれるような作品でした。強力にオススメさせていただきます。
(ただし、精神的に不安定なときや家族関係に大きなトラブルを抱えている人は、観ないほうがいいかも)


 以下ネタバレ感想です。本当に良い作品なので、ぜひ、映画を観てから読んでくださいね。


 しかし、この映画、結果的には、オダギリジョーばっかり得する結果になって、お兄さんは全然救われていないというか、こう言ってはなんですが、智恵子という「今後煩わしくなりそうな女」がいなくなってしまったということも含めて、「人生の不公平」というのを感じさせてくれますよね。そもそも、猛って悪人すぎるだろ、と。いくら昔の彼女でも、お兄さんが憎からず思っている女性といきなり寝たりするのはあまりに酷い。「酷い」と思わせること、あるいは「どうしようもないものを抱えている男」であることを伝えることを制作者は狙っているのでしょうけど、少なくともその前の葬儀での兄弟のやりとりでは、猛は稔にそれなりに感謝し、大切にしているように見えましたしね。でも、あの吊り橋での稔は、本当に「キモイ」よなあ。そして、ああいうタイプのキモさは、僕には他人事とは思えない。むしろ、久々に会っていきなり「家に行ってもいい?」とか言える猛のほうが僕には遊星からの物体Xです。

 そして、警察が起訴に踏み切った理由が「膣から稔のものではない精液が出てきたから」というのは、ちょっと「決め手」としてはどうなのかな、と。木村祐一が演じていた弁護士も誘導尋問しまくりの独演会だったですし。

 まあ、「ちょっと気になったところ」を並べたててみましたが。本当にいい映画だったですよね。あの後味の悪さも含めて。僕はたぶんあのあと稔はバスに乗ってどこかへ行ってしまったと思うのですが、エンディングテーマは「家に帰ろう」っていう曲だったので、また「ゆれて」しまいました。

 僕がこの映画から得た教訓:「吊り橋を渡るのはなるべく避けよう」

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