あらすじ: 人知を超えた悪によってひそかに進められる地球壊滅の陰謀。それを食い止めるべく、大富豪で天才発明家アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr)、神々の国から地球ヘと追放された雷神ソー(クリス・ヘムズワース)、感情の爆発によって容姿を激変させる科学者ハルク(マーク・ラファロ)などを集めた部隊アベンジャーズが結成される。しかし、各々が抱えているつらい過去や苦悩が浮き上がっては衝突し合うようになり、人類史上最大の危機に立ち向かうチームとしての機能が消失しかけていた。
2012年23本目の劇場鑑賞作品。
夕方からの回で、3D日本語吹き替え版を鑑賞。
ちなみに観客は15人くらい。
まあ、平日の夕方ですからね。
こんな挑発的なキャッチコピーでやってきた『アベンジャーズ』。
もともとアメコミヒーロー映画がけっこう好きな僕としては、ものすごく期待していたのと同時に、不安でもありました。
「こんなにヒーローをたくさん出して、散漫な映画になるんじゃないか?」
「これって、アメコミ映画が売れなくなったという理由での『抱き合わせ商法』みたいなものじゃないのか?」
「もしこれが面白かったとして、これから『単品』の『アイアンマン』とか見ても物足りなくなりそうだな」
それにしても、この映画の「お祭り感」は半端じゃありません。
それぞれ、1本の映画の主役になれるクラスのヒーローたちが勢ぞろい、ですからね。
子どものころ、『東映まんが祭り』を観に行ったときのワクワク感がよみがえります。
『まんが祭り』では、日頃のテレビ放送では見られない、スーパーヒーロー同士のコラボレーション企画があって、『マジンガーZ VS グレートマジンガー』なんてタイトルに、「あの正義のスーパーロボット同士が戦うのか!どっちが強いんだ?」と推さない日の僕は胸を躍らせていたのです。
しかしながら、実際は。強そうな敵が出てきて、マジンガーZとグレートマジンガーが協力してそいつを倒す、というような内容ばかりで、子供心に「VS」って、そういう意味じゃないだろ?とガッカリしていたんですよね。
今回の『アベンジャーズ』も、予告編をみながら、「でも、どうせだったら、スーパーヒーロー同士が戦ったほうが面白そうだけどね」なんて思っていたのですよ。
まあ「協力プレイ」なんだろうな、と予想しつつ。
ところが!
この『アベンジャーズ』のすごいところは、上映時間の最初半分くらいは、敵がほとんど出てこず、スーパーヒーロー同士がいがみあい、バトルを繰り広げるところなんですよね。
そうだよ、それが見たかったんだ!
でも、本当にやるとは思わなかった!
日本のヒーローものだったら、「イメージが崩れる」ということで絶対やらないような、ヒーローたちのみっともない、いがみあいを観客は堪能することができるのです。
なかでもアイアンマンの口の悪さといったら!
キャプテン・アメリカのコスチュームが古臭いとか、みんな頭が悪いとバカにしたりとか、ハルクを挑発したりとか、「なんか、自分が主役のときよりも性格悪くなってない?」と感じました。
いちばんの常識人のキャプテン・アメリカは、いかんせん飛べないし飛び道具もないし、戦闘力が低いため、アイアンマンにバカにされまくり。
そりゃあ、このワガママヒーローたちをまとめる計画なんて、挫折するのが当然だろうな、という感じです。
スーパーヒーローたちは、「あの歪んだ連中」なんて呆れられてもいます。
考えてみれば、「4次元キューブの平和利用」なんていう余計なことを考えずに海に沈めていればこんなことにはならなかったわけで、『ダークナイト・ライジング』といい、アメリカのヒーローって、なんてマッチポンプな連中なんだ、と呆れかえるばかり。
ちなみに、地雷と噂されていた米倉良子さんの吹き替えもかなりアレだったのですが、フューリー司令官役が竹中直人さんだったのには、なんかずっと違和感がありました。
どうも、僕は竹中さんの真面目な演技を観たり聞いたりすると、居心地が悪くなっちゃんですよね。
このフューリー役、竹中さんとしても、真面目にやるべきなのか、若干リラックスしてやるべきなのか、ちょっと迷っているような気がしたのです。
それにしても、サミュエル・L・ジャクソンさんって、『スター・ウォーズ』ではジェダイ・マスター役、そして『アベンジャーズ』を束ねる司令官役と、「男子なら、一度はやってみたい職業」二階級制覇ですよね。なんかうらやましいなあ。
まあ、こんな清原ばっかりの野球チームの監督のような仕事は、実際にやるとなったらすごく大変でしょうけど。
とりあえず、前半は味方同士の内輪ゲンカのオンパレード。
手を出す前に、とりあえずちょっとでも話をしていれば戦闘は回避されそうなのに、とにかくまず手を出してしまうというのは、たぶん観客へのサービスなんでしょうね。
まあ、「アイアンマンVSソー」なんていう対決は、こういう映画でもないとみられないし。
その戦いが「目があったというだけで起こる、田舎のヤンキーの喧嘩」みたいなものであったとしても、観客は大満足です。
終わったとたんに「お前もなかなか強いな!」なんてそれなりに仲良くなってしまうのは『朝まで生テレビ』かよ!って言いたくなりますけど。
スーパーヒーローたちのうち、空を飛べるのはアイアンマンだけ、飛び道具を持っているのもアイアンマンとホークアイだけ、という設定のため、アイアンマンにかかる負担はかなり大きくなります。
そんななか、それぞれのヒーローにちゃんと「見せ場」をつくっているのはさすがです。
僕はハルクの「怒ってキレないようにする技術」がすごく参考になりました。
最後はヒーローたちが入り乱れながらの大迫力の戦闘シーン。
最初は「こんなの観たら、もうバラ売りだと満足できなくなるのではないか?」と懸念していたのですが、『アベンジャーズ』を観ると、かえって個々のヒーローが活躍する作品を見直したくなります。
これはかなり商売上手だなあ。
ストーリーがどうとか語るよりも、「とにかく、スーパーヒーローたちが同じ画面のなかにいて、『夢の共演』をしている映画」であり、それをニコニコしながら眺めて、幸せな気分になれれば、それでいい、そんな映画です。
これぞまさに「アメコミおやじのための『MARVELまんが祭り』!」