琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

ローン・レンジャー ☆☆☆☆



あらすじ: 幼い頃に遭遇した悲しい事件への復讐(ふくしゅう)をもくろむ悪霊ハンターのトント(ジョニー・デップ)は、そのスピリチュアルな力で死の一歩手前の男、ジョン(アーミー・ハマー)を救う。正義感の強いジョンは、目的を達成するためならどんな手段も用いるトントと衝突するも、愛する者を奪われたことで豹変(ひょうへん)。マスクを装着し“ローン・レンジャー”と名乗り、トントと一緒に巨悪に挑む。

参考リンク:映画『ローン・レンジャー』公式サイト


2013年22本目。
お盆休みに世間が突入した月曜日のレイトショーを鑑賞。
観客は15人くらいでした。
風立ちぬ』は、かなり盛況で、さまざまな年代の人が観ていたようです。


この映画の予告編を最初に観たとき「ジョニー・デップ、仕事選べよ……というか、こういう仕事ばっかり選んでるのかな……」「なんだか『パイレーツ・オブ・カリビアン』みたいだな(ジョニー・デップが特殊メイク系の狂言回しを演じているので)」と感じたのを覚えています。
「あんまりおもしろくなさそうだな」とも。


この映画、「『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのジョニー・デップゴア・ヴァービンスキー監督ら主要スタッフが再びタッグを組んだアクション・アドベンチャー」、なのだそうで、似ているのもむべなるかな、というか、同じメンバーなら、違うの作ってみればいいのに!とか、ちょっと思ったんですけどね。


悪霊ハンター・トントがジョニー・デップで、ローン・レンジャー役には、『J・エドガー』のアーミー・ハマー
この二人のコンビが、19世紀後半の鉄道利権に絡んだ「巨悪」と戦っていくのです。


この映画、19世紀半ばから後半にかけて、大陸横断鉄道が敷かれていく時代のアメリカが舞台なのですが、テーマ的なものを重く受け止めることも可能な話ではあるんですよね。
ネイティブ・アメリカンと白人文明との衝突……とみせかけて、実は、白人文明が自分たちの利益のために、ネイティブ・アメリカンを追いつめ、利用していった事例も描かれています。
そして、鉄道という「インフラ」が、それまでの世界の力関係を大きく変えていったことも。


でもまあ、そんなふうに真面目に観ようとするのは、この映画の「楽しみかた」じゃないんですよね、たぶん。
所々に散りばめられた、「小ネタ」で笑いつつ、「これ、どうやって撮影したんだ?」と目を見張るような鉄道アクションを堪能する、それで良いのではないかと。
この鉄道アクション、本当にすごいんですよ。これを観るだけでも、この映画を観る価値があるんじゃないかなあ。というか、この映画のスタッフは『ローン・レンジャー』じゃなくて、「鉄道を舞台にした、アクション・アドベンチャー」を撮りたくて、それを『ローン・レンジャー』という有名作品のなかで実現したのではないかと。


この映画、アメリカでは有名な作品らしいけど……と思いつつ、予備知識無しで観たのです。
馬の「シルバー」って、なんか聞いたことあるなあ、というくらいの感じで。
で、家に帰って調べてみたのです。

Wikipediaの『ローン・レンジャー』の項によると、

1933年にラジオドラマが放送されて以来、アメリカン・コミックス化、テレビドラマ化(1949年-1958年、全221話)、映画化(1956年・1958年・1981年)もされた。


2013年、ウォルト・ディズニー・ピクチャーズによる映画が製作された。


日本ではテレビドラマ版が1958年からテレビ放映され、黒い仮面をつけた主人公が白馬にまたがった姿が、アメリカ版『鞍馬天狗』として親しまれた。


主人公ローン・レンジャーが愛馬シルバーを発進させる時の掛け声「ハイヨー、シルバー!(Hi-yo Silver)」や、相棒であるステレオタイプなインディアンの青年・トントの台詞「白人嘘つき。インディアン嘘つかない」(これは白人がインディアンに対し欺瞞で収奪を繰り返して来たことへの批判である)、トントが主人公を呼ぶ言葉の「キモサベ」などの流行語を生んだ。

僕は世代的にリアルタイムでテレビドラマを観てはいないのですが(というか、アメリカ人にとっても、かなりの「古典」なのではなかろうか)、「インディアン嘘つかない」のルーツは、この『ローン・レンジャー』だったんですね。
直接この番組を観たことがないはずの僕も、この言葉は知っています。
この映画が「トントの昔語り」の形式になっているのは、多くのアメリカ人にとっても、「いまの作品」というより、「伝説」だからなのかもしれません。


個人的には、150分も上映時間があるわりには、個々の登場人物(とくに主役のローン・レンジャーとヒロイン)の印象が薄かったこと(いちばん名演だったのは、白馬・シルバーだったと思う!)、クライマックスで悪者たちのやられっぷりが大ボスを除いていまひとつカタルシスに乏しかったことなど、ちょっと残念なところもあるのですが、上映時間の長さを感じない、良質の娯楽作品です。
「ウイリアム・テル序曲」なんて、ベタだなあ!
なんて思うのだけれども、この映画を観ていると「ベタだからって、バカにしちゃいけないなあ。長い歴史を生き延びてきた曲って、やっぱり盛り上がるんだな」と妙に感心してしまいました。
(ちなみに、テレビドラマでも『ウイリアム・テル序曲』が使われていたんですね。原作の記憶がない僕でもニヤニヤしてしまったのだから、知っている人は嬉しかったんじゃないかなあ)


夏休みだし、とにかく派手で楽しめるアクション映画をみんなで観たい!
そういうニーズに、正しく応えてくれる良作だと思います。

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