琥珀色の戯言

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【読書感想】去年の冬、きみと別れ ☆☆☆


去年の冬、きみと別れ

去年の冬、きみと別れ


Kindle版もあります。
[asin:B00ISQNGYA:detail]

内容(「BOOK」データベースより)
ライターの「僕」は、ある猟奇殺人事件の被告に面会に行く。彼は、二人の女性を殺した容疑で逮捕され、死刑判決を受けていた。調べを進めるほど、事件の異様さにのみ込まれていく「僕」。そもそも、彼はなぜ事件を起こしたのか?それは本当に殺人だったのか?何かを隠し続ける被告、男の人生を破滅に導いてしまう被告の姉、大切な誰かを失くした人たちが群がる人形師。それぞれの狂気が暴走し、真相は迷宮入りするかに思われた。だが―。日本と世界を震撼させた著者が紡ぐ、戦慄のミステリー!

 中村文則さんって、『土の中の子供』で芥川賞を受賞した、あの中村さんだったんですね。
 いつのまにか、ミステリを手がけるようになられていたとは。
 登場人物が虐待を受けていた、なんていう背景は、中村さんらしいな、などと思いつつ読みました。
 この『去年の冬、きみと別れ』は、海外でも高く評価され、『本屋大賞』にもノミネートされています。


 そんなに長い作品でもないので、1時間半くらいで一気に読んでしまったのですが、率直に言うと、「なんだかすべてにおいて、中途半端な感じのミステリ」だと感じました。
 虐待、謎に満ちた写真、芥川龍之介の『地獄変』、人形への偏愛……
 こういう、横溝正史系ミステリマニアの心をくすぐるような、小道具満載なんですよ、この作品。
 読んでいて、「うわーなんだかおどろおどろしいな、気色悪いものを読まされそうだな……」と、半ば身構え、半ば楽しみに読んでいたのですが……

 無数の黒い蝶が、白い部屋の中で乱れ飛んでいる。それは煙のようにいくつかの渦を巻き、部屋の中央から弾けるように、爆発的に広がっている。その無数の蝶の乱れの向こうに、人間がいる。女だ。でも膨大な数の蝶の陰になり、姿が見えない。隠れている。服を着ているのかすらわからない。一見女かどうかもわからない。でも、それは女だった。なぜだかわからないが、それがわかる。
 ”真の欲望は隠される”。賞の授賞へと推したあるロシアの写真家が、この写真を評している。


 この作品って、ひとつひとつの「小道具」は、すごく魅力的なのです。
 ところが、「この思わせぶりな小道具は、きっとこのミステリの根幹にかかわる、伏線なのだろうな」と思いながら読んでいると……あれ、もう終わり?
 この魅力的な小道具たち、本当にただの「置物」だったとは……
 読んでいて、前半で、「ああ、これは『もほうのさ……ゴホンゴホン(ネタバレっぽいのでカット)』だな」と思いました。


 うーむ、惜しいというか、何なんだこれは……
 たぶん、「読者が混乱するような、カオスな話」を書きたかったのだろうな、とは思うのです。
 登場人物が、このトリック(と言うべきなのかな……)を成立させるために、作者の都合よく動き過ぎているし、警察もそこまでアホではないのでは、とか、考えてしまうところもあるんですよね。
 こういう世界を描くのであれば、読んでいてムカついたり、気持ち悪くなったりするくらい「徹底的に」描いてほしいのです。
 
 
 そんなに長くもないし、結末を見届けたくなるくらいには「続きが気になる作品」だったのですけどね。
 あまりに小道具が豪華なだけに、かえって拍子抜けしてしまった感じです。

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