琥珀色の戯言

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【読書感想】珈琲店タレーランの事件簿 3 ~心を乱すブレンドは ☆☆☆


内容紹介
珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を』で鮮烈なデビューを飾った著者による、シリーズ第三弾。シリーズは合計100万部突破と、好調な「珈琲店タレーラン」シリーズの待望の最新刊です。今回の舞台は、関西バリスタNo.1を決めるバリスタ大会。この大会に初めて出場した美星と付き添いのアオヤマが、連続して起きる不可解な事件に巻き込まれていきます。
内容(「BOOK」データベースより)
実力派バリスタが集結する関西バリスタ大会に出場した珈琲店“タレーラン”の切間美星は、競技中に起きた異物混入事件に巻き込まれる。出場者同士が疑心暗鬼に陥る中、付き添いのアオヤマと犯人を突き止めるべく奔走するが、第二、第三の事件が…。バリスタのプライドをかけた闘いの裏で隠された過去が明らかになっていく。珈琲は人の心を惑わすのか、癒やすのか―。美星の名推理が光る!


このシリーズの第1作を書店で見かけたときには「うわっ、こんなあからさまな『ビブリア古書堂』フォロワーまで出てくるとは……」と、苦笑してしまったものです。
半ばネタとして読んでみたのですが、なんというか、面白い!ってわけじゃないけれども、気張らずに読める軽いミステリだな(まあ、『謎解きはディナーのあとで』のようなものです)と、けっこう好感度は高かったんですよね。
人が死にまくることもないし。
僕自身、なんかこういう「甘酸っぱい恋愛系」みたいな世界とは無縁の人生だったこともあり、「ケッ!こんなバリスタとかいねえよ!」とか言いつつも、けっこうノリノリで読んでもいたわけで。
「そんなにすごく面白いわけじゃないけど」と自分に前置きして読める本は、けっこう気分転換になりますし。


とかまあ、いろいろ言い訳をしてみたのですが、結局3巻まで読んでいるということは、なんのかんの言っても「嫌いじゃない」のですよねきっと。
魅力を教えてくれ、と言われると、たぶん、「面白すぎないところ」「人の心に深く入り込みすぎないところ」なんじゃないかなあ。


で、この『タレーラン』も、ついに3巻目。
『ビブリア古書堂』は、わりと「次はいつ出るのかな?」なんて注目しているところがあるのですが、『タレーラン』は、「ああ、もう次の巻が出たのか」という感じで、あまり意識していないだけに、かなり量産されているような感じがします。


この3巻目はシリーズ初の長編で、「バリスタ大会」が舞台。
こんなふうに「大会」がはじまるのは、ジャンプの連載漫画で人気があるのに作者のネタが切れてきたとき、なんだよなあ……なんて思いつつ読みはじめたのですが、中身は「けっこうありがちな密室ミステリ」です。
350ページ以上もあるのですが、一気に読んでしまったので、それなりに続きが気になる話ではあるのです。
途中で「実はこれは密室ではありませんでした!」ということが明らかになったり、「あの人が密室に入っていたんですが、報告する必要はないと思って……」と登場人物が途中で告白したり、激レアな「難病」が出てきたりと、「ミステリとしては、ちょっと卑怯な感じがする」のですけど。


で、ミステリ寄りになってしまったがために、美星さんとアオヤマくんとの絡みが少なくなってしまってもいますし。
なんか読んでいて物足りなかったのは、あの「ベタなラブコメシーン」が少なかったから、なのかも。
ほんと、「お前らもうバレバレなんだから、さっさとはっきりしろよ!」と。
まあ、「バレバレ状態から、何十巻も続け、結婚してからも子供だ周囲の問題解決だ、で100巻を超えた、国民的グルメマンガ」もありますからねえ。
人気が出ると、「好き」ともなかなか言わせてもらえないんだろうな。


中村 文則さんの『去年の冬、きみと別れ』 のようなミステリ、というか、「それぞれの登場人物の意思といろんな偶然が積み重なって、結果的に複雑なトリックになったしまった」というのは、やりすぎると、「御都合主義」な感じになってしまうんですよね。


でもまあ、これってミステリマニアのための本じゃないし、「面白すぎない」「重すぎない」気軽に読めるミステリとしては、「そんなに悪くない」のだろうな、とは思いますし、これはこれで良いのでしょうね。
ああ、でもやっぱりこのシリーズは、「歯が浮きまくるようなラブコメ場面」が少ないと、ちょっと寂しいかも。




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