琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

【読書感想】博物館ななめ歩き ☆☆☆

博物館ななめ歩き

博物館ななめ歩き


Kindle版もあります。

博物館ななめ歩き (文春e-book)

博物館ななめ歩き (文春e-book)

全国6200館の博物館を巡ったミスター博物館こと京都国立博物館副館長の栗原祐司氏と一緒に、博物館好き・なまけ者漫画家の久世番子さんが東京を中心に各地のとっておきの博物館94館を、ユーモアあふれるイラストで紹介。
たった1坪しかない「つまみかんざし博物館」、30ヘクタールの土地の中にある東京大学の「農場博物館」、実は渋谷のど真ん中にある「古代エジプト美術館」、ほかにも教科書の博物館に、古墳博物館、駄菓子屋ゲームの博物館まで興味深い場所ばかり。巻末には2019年に日本で初めて開かれたICOM(国際博物館会議)京都大会の模様をレポートした漫画を収録。
本書を持って近くの博物館を散歩するもよし、また外出せずとも博物館巡りが本の中で楽しめます。


 僕も美術館や博物館、けっこう好きなのですが、この本を読むと、僕の博物館好きなんて、「好き」のうちに入らないなあ、と圧倒されてしまいます。
 東京都内だけでも、こんなにいろんな博物館があるんですね。
 というか、東京の博物館紹介がメインなので、九州在住の僕にとっては、「こんなところがあるのか……」と感心はするものの、ここに行くために東京に行く、というほどでもないし、東京に行ったときにぜひ寄ってみたい、という気分にもちょっとなれない、かな……
 この本では、基本的に、見開き2ページで1つの博物館が紹介されているのですが、ページをめくってみての率直な印象は「うわー、なんかすごく情報量が多くて読みづらい……」だったんですよ。老眼が進んできている僕にはきつい。眼鏡を外して読まざるをえませんでした。
 結構長い間、文化庁の冊子(?)に連載されている作品のようなのですが、雑誌に毎回一つずつ掲載されていたら、ちょうど良い案配だと思うのだけど、こればかりを続けて読むのはかなりつらい。
 
 それにしても、東京の博物館って、層が厚いというか、本当にいろんなところがあるんですね。
 いや、僕の地元の人口数十万人くらいの地方都市でも、けっこう「小さな美術館とか記念館の案内板」を見かけるのです。
 いったいどんなものが展示してあるのだろう、と思いつつも、誰もいない博物館内に、僕と博物館員の人がふたりきり。「この人はこのジャンルに興味があるんだなあ。何か質問してきたり、ミュージアムショップで買ってくれるかなあ」なんて期待の目で見つめられ、あまり興味がわかなくても、一生懸命観ているふりをしなければならない……なんていう想像してしまい、なかなか門をくぐれません。
 小さな美術館・博物館で、「要予約」なんていうのは、けっこう敷居が高い。
 全国6200の博物館を巡った栗原さんって、本当にすごいなあ、と思います。というか、博物館って、6200もあるんですね。

  東京都新宿区の日本オリンピックミュージアムというのが、新国立競技場の隣にできているのです。

 2020年東京大会の前にまずオリンピックの世界を学ばないとね!!

 とマンガには書かれていて、まさか、2020年の東京オリンピックが延期となり、2021年の開催もどうなるかわからない状況になってしまうとは。
 
 「渋谷区ふれあい植物センター」では、毎年6月に螢鑑賞会が行われている(2020年は新型コロナの影響で中止になったそうですが)、というのを読んで、東京って、人が集まってくるところって、そこそこの人口の地方都市よりもずっと、都会なのに自然に触れられるようになっているのかもしれないな、と感じます。
 いやほんと、なんのかんの言っても、東京は文化の裾野が広いなあ、と感心せずにはいられないのです。
 ここで紹介されている博物館も、地元の人でも知らないところが少なからずあるのでしょうけど。
 
 巻末には、連載で紹介されたのに。残念ながら閉館してしまった博物館の回がまとめて小さく掲載されているのですが、僕は読みながら、「このなかで、いくつの博物館が今も開館しているのかなあ」なんて思っていたので、むしろ、この本に掲載されているたくさんの「知られざる博物館」は、営業(?)形態はさまざまながら(土日のみ開館とか、要予約、というところもあります)、まだ存続しているということに驚いたのです。
 そんなに多くの人が興味を持ちそうもないテーマの博物館でも、伝えたい人がいて、知りたい人もいる。
 人間の興味の多様性に圧倒されます。

 東京大学大学院の農学生命科学研究科・農学資料館には、あの忠犬ハチ公の臓器(肝臓、心臓と肺、脾臓)が展示されているというのを読んで、「ヨーロッパの王族も、死後に心臓が摘出されて箱におさめられている(公開はされていませんが)」という話を思い出しました。
 国立科学博物館に展示されていた忠犬ハチ公の剥製は理解できるのだけれども、臓器って……いったい誰が何のために保存し、公開しているのだろうか……「忠犬」は内臓も他の犬とは違うのだろうか……

 人間の知りたい欲望と展示したい欲求についても、考えさせられます。
 見せたい人のわりに、見たい人が少ないというのは、ネット上のブログとかSNSも同じだよなあ。


fujipon.hatenadiary.com

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