琥珀色の戯言

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ラスト・チャイルド ☆☆☆☆


ラスト・チャイルド(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ラスト・チャイルド(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ラスト・チャイルド(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ラスト・チャイルド(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

内容紹介
早川書房創立65周年&ハヤカワ文庫40周年記念作品。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞&英国推理作家協会賞最優秀スリラー賞受賞。

十三歳の少年ジョニーは、犯罪歴のある近隣の住人たちを日々監視していた。彼は、一年前に
誘拐された双子の妹アリッサの行方を探しているのだ。美しい少女だった妹は何者かに連れ去
られたが、警察はいまだ何の手がかりすら発見できずにいた。ジョニーの父親も、娘が誘拐さ
れてまもなく謎の失踪を遂げ、母親は薬物におぼれるようになった。少年の家族は完全に崩
壊したのだ。ジョニーは学校を頻繁にさぼり、昼夜を問わない危険な調査にのめり込んでいく。
ただひたすら、妹の無事と家族の再生を願って……。

アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞&英国推理作家協会賞最優秀スリラー賞受賞」というキャッチコピーと「2010年週刊文春ミステリベスト10(海外)第1位」「このミステリーがすごい!2011年版(2010年)第5位」などと錚々たる受賞歴を誇るこの作品、まずハズレということはなかろうと思い、ちょっと苦手な翻訳ミステリにもかかわらず、読み始めました。

しかし、翻訳ミステリというのは、なんというか、日頃日本のミステリを読んでいると、「なかなかエンジンがかかってくれない感じ」がするのです。人物造型や舞台設定をキッチリ説明してから、物語が始まるので、前半はかなりまだるっこしい気がしますし、全体としても、かなり冗長な印象がありました。


話が進みはじめる下巻、とくに下巻の後半部分は、一気読み確実の緊迫感なんですけどね。
ただ、この作品そのものが、けっこう「御都合主義的な人物」によって左右されてしまっている気はしますし、妹と父親が行方不明で、母親はドラッグ中毒という主人公・ジョニーの家庭環境は、読んでいて重苦しい気分にならずにはいられません。この「重厚さ」はこの作品の魅力ではあるのですが、その一方で、ジョニーが「家族の再生を願って、危険な調査を続ける」までは理解できても、「銃を持って潜入」とか「車を自由自在に運転(13歳なのに!)」とかは、「花形満かよ!」とツッコミをいれずにはいられませんでした。
いや、アメリカにはそういう中学生が「いてもおかしくない」のかもしれないけど……

『ラスト・チャイルド』というタイトルの意味も含め、重苦しい内容のなか、最後はすごく「腑に落ちる」作品ではありますが、それなりの覚悟を持って読まないと、「うわーなんだこの重苦しくて、冗長なミステリは……」と挫折してしまう可能性もあるのではないかと思います。
むしろ、「海外では、こういうミステリが絶賛されるのか」と「日本と海外のミステリ文化の違い」を考えながら読んだほうが、「面白い」のではないかなあ。

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