琥珀色の戯言

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9割がバイトでも最高のスタッフに育つ ディズニーの教え方 ☆☆☆


9割がバイトでも最高のスタッフに育つ ディズニーの教え方

9割がバイトでも最高のスタッフに育つ ディズニーの教え方

内容(「BOOK」データベースより)
チーム全員がリーダーになるように「人を育てる」法則。部下、後輩、新入社員、正社員、派遣社員etc.相手がどんな立場でも使える人材教育メソッド。

出版社からのコメント
昨年、過去最高益を出したディズニーランドでは、9割のスタッフが正社員ではなく、アルバイトでアトラクションを運営しています。
しかし、アルバイトでも最高のサービスを提供し、ディズニーランドは他の遊園地とは異なる、そして不況にも負けないブランド価値をつくりあげていますが、その背景には徹底したディズニーの社員教育システムがあります。
また、人材レベルの高さといえば、リッツカールトンとディズニーが有名ですが、この2社には、
●リッツカールトン:人の「素質」を見極める(=社員のポテンシャル重視)
●ディズニー:どんな人材でも育てることを重視する(=教育重視)
という決定的な差があるのです。どんなにCSを高めようとしても、その前段階の社員教育が成功なくしてCSは成り立ちません。
そこで、「社員教育」をテーマにディズニーの人材教育方法を紹介しながら、一般の会社でも活用できる社員教育のコツとポイントを解説します。

うーむ、字が大きくて読みやすい一方で、そんなにすごいことが書いてあるようには思えない本ではあります。これで1300円というのは、ちょっと割高感あり。
この本では、「ディズニーの教えかた」が紹介されているのですが、僕には「そのやりかたでアルバイトに『通じる』のは、そこがディズニーランドだからじゃないの?」という気がするんですよ。

この本の冒頭に、こんな記述があります。

 ただ、ディズニーは「ウエルカム」、つまりアルバイト採用に応募してきた人は、基本的に全員採用する方向で対応しています。


 年によって異なりますが、1年間で、約18000人いるアルバイトのうち半分近くの9000人くらいが退職していきます。
 そのため、1年に3回くらい3000人近くのアルバイトを採用しなくてはなりませんが、推定で5万人以上の応募者が集まります。


 もちろん、採用人数には限りがあります。ですから、すべての人を採用することはできません。しかし、基本的には「ウエルカム」というのがディズニーの姿勢です。


 ただ、面接で、「笑顔を出すことができますか」という質問をしたとき、なかには、どうしても出せないという人がいます。
「笑顔が出せない」というのは、ゲストに不満足を与えることにつながるので、こういう人は採用が見送られます。
 もちろん、人としての基本的な挨拶ができていなかったり、ディズニーの身だしなみのルールが守れないというような人は採用されません。
 このほか、時間帯が合わないなど、いろいろな事情で辞退する人もいます。
 たしかに、ディズニーには、テーマパークの運営上、大量採用しなければならないという事情があります。
 しかし、ディズニーには「人は経験で変わる・育つ」という考え方があります。
人には変わる・育つ可能性があり、その可能性を実現することが、ディズニーの高いクオリティを維持していくことにつながると考えているのです。

 おお、さすがディズニー!人を「育てる」企業!
 ……って、素直に思えたら良いのでしょうけど。
 僕は「笑顔を自分の意思で出す」ことができません。やろうとしても、ひきつった、気色悪い表情になってしまいます。
 そもそも、「笑顔が自由自在に出せて、基本的な挨拶ができ、身だしなみがある程度きちんとしている」って、かなりの「優良人材」なのでは……
 なんのかんの言っても、ディズニーというのは、「働く人を選べる会社」ではあるんですよね。
 「ディズニーで働きたい人」のなかには、たしかに「ブランドイメージだけで応募してくるダメな人」もいるでしょうし、有名企業にも「企業名にあぐらをかいて、人を育てることができない企業」も少なからず存在するのでしょうが、それにしても、「有利な企業」ではありますよね。

 
 それでも、ディズニーという企業は、「人を育てるシステム」が充実していることは間違いありません。
 それは、企業としての基本方針がしっかりしているから、でもあるのでしょう。

 ディズニーの行動指針の優先順位は、次のとおりです。
(1)安全性(Safety)
(2)礼儀正しさ(Courtesy)
(3)ショー(Show)
(4)効率(Efficiency)

当たり前のことのようで、こういうことがちゃんと明示されている企業というのは、そんなに多くないはずです。

 そして、この本のなかでいちばん役に立つのは、「後輩への接しかた」を紹介している部分だと思います。
 著者は、ディズニーの上司・先輩が、日頃後輩と話す機会をもつときに注意している2つのポイントを、こんなふうに述べています。

(1)後輩が安心して話せる環境を選ぶ


 たとえば、後輩が人に聞かれたくないような話をしなければならないときは、人目につかない場所を選択します。
 ケース・バイ・ケースですが、何も応接室で話す必要はありません。人のあまり来ない倉庫の片隅で話し合うとか、とにかく、後輩や部下がよけいな心配や不安を感じないですむような場所を選ぶことが大切です。

(2)後輩が、どういう状態であるかをつかむ


 ディズニーの上司・先輩が注意しているもうひとつのポイントは、後輩がどういう状態であるかを把握することです。
 もっと具体的にいうと、後輩が、心身ともに疲労した状態であるか、それとも心身ともに充実した状態であるかをみるのです。

 
 というのも、心身が疲労している状態のときに、
「頑張れよ」
「もっと笑顔を出そうよ」
と言っても、改善しないからです。

 たとえば、恋人のことや、家庭内のことに原因がある場合には、いくら仕事の話をされても、そちらのほうが気になって、仕事のことに集中できないものです。まず心の問題を解決しないかぎり、仕事上の問題は解決できません。
 こういう場合は、カウンセリング(相談)的な対応が求められます。


 一方、心身が充実している場合は、
「今度、どういう目標でいく?」
「ここまできたね。よし、また頑張っていこう」
と、さらなる飛躍を願って、コーチング(指導)的な対応をとることができます。

 大事なのは、「相手をよく見る」ってことなんですよね。
 僕などは、自分のことで一杯一杯で、なかなかそれがうまくできないんだよなあ。

 
 カストーディアル(パークの清掃係)は、いかにしてディズニーの「人気部署」になったのか?という話も興味深かったし、結局のところ、どんな仕事でも、やる気を左右するのは「人間関係」なのだな、と考えさせられる一冊です。
 やっぱり、ディズニーというバックグラウンドがないと真似できないところも多いとは思うのですが、後輩とどう付き合っていくかに悩んでいる人にとっては、参考になる部分はある本ですよ。

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