琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

わたし、公僕でがんばってました。☆☆☆☆


わたし、公僕でがんばってました。

わたし、公僕でがんばってました。

内容(「BOOK」データベースより)
阪神淡路大震災の復興、無縁社会の現実…H県県庁職員として、闘ってきた9年間の日々。全国300万人の地方公務員に贈る、悲哀のお仕事コミックエッセイ。


出版社からのコメント
失礼ながら、私も古林さんの原稿を読むまで、公務員の方がこんなにも大変なお仕事をしていることを知りませんでした。「おおやけのしもべ」として、今日も懸命に働く公務員のみなさんに、感謝の気持ちとエールを送りたい......。そんな気持ちで書かれた本作は、公務員の方だけでなく、公共サービスの恩恵にちょっとでも与ったことがあるすべての方に、読んでいただきたい作品です。

 僕も「地方公務員として」働いた経験があるのですが(医局から派遣されて勤務していた「医療職」なので、一般的な公務員とは違いますけど)、「民間企業の一部の人たちの、公務員嫌い」には、すごく困惑させられました。
「公務員だから、9時5時+土日は休みなんだろ!」
……いや、こうしてあなたと話している時間が、すでに19時なんですけど……
土日も当直があれば、緊急処置でしょっちゅう呼び出されているし……


「公務員嫌い」の人は、「公務員=ラクで高給」、「民間=キツくて薄給」という先入観で凝り固まっているのだけれど、そりゃあ、「公務員のなかで、いちばんラクしてそうな人」と、「民間の平均」を比べちゃダメですよね。
逆に、「平均的な公務員」と「民間企業で、ラクしている人」を比べたらどうか、と考えてみればいいはずです。


「だから公務員は!」っていう中小企業の偉い人は、「自分たちは民間企業だから」「公務員じゃないんだから」という理由で、社員を酷使しているわけです。
うーん、そりゃ「公務員が恵まれている」のではなくて、あなたの会社がブラックなだけなのでは……
それでも、現実としては、「平均的な公務員は、平均的な民間企業従事者よりは、お金や福利厚生の面で恵まれている」とは言えると思います。


前置きが長くなりましたが、このマンガの話に戻りましょう。
著者の古林さんは、某H県の職員としての経験を、このマンガに書いておられます。
前半の給料とか、福利厚生とかの話を読んでいると、「やっぱり公務員って羨ましいなあ」と思う人も多いはず。
僕も「ちょっとめんどくさそうなところもあるけれど、やっぱり『恵まれている』んじゃない?」って感じました。


でも、後半、古林さんが生活保護の担当となってからの話を読むと、「これはキツイな、僕も辞めるだろうな……」と暗澹たる気分になりました。


僕も病院勤めですので、「社会のセーティネット化している病院」の現実に直面することもあります。
そういうときに、矢面に立って、お金のことや生活のことを考えてくれるのも「公務員」なんですよね。
にもかかわらず、担当している人に「生活保護を受けさせろ」と脅されたり、恨まれたり、酷い言葉を投げつけられたり。
「やりきれない仕事」だと思う。

 私は一番困ったのは電話でした
「ハイ、生活福祉課です」
「○○さんいますか」
「申し訳ありませんが○○はただ今、出張――」
「アタシが困っとんのに何でおらへんのや!? アタシらは寒い外なのにアンタら公務員はぬくぬく楽してええもん食べて 聞いとんのかこら」
(またこの人か……)
「アタシが死んだらアンタのせいやで!!」


この人が孤立困窮しているのは妄想を伴う病気の治療を本人が拒否しているためですが、先方が切るまで我慢しないと代表電話経由でかかってきます。


このあと数年電話がこわくて 家の電話さえとれませんでした。


この辺が私の限界でした
胃潰瘍と十二指腸潰瘍になったり、下痢が半年続いて痔になったり 保護費を減額された受給者に「訴えてやる」と脅されたり
激しい生理痛とおう吐で救急車のお世話になり
ついに辞める決意をしました

世の中には、「公務員は恵まれているんだから、何を言ってもいい」と考えている人もいるのです。
そして、そういう容赦ない言葉を浴びせられるのは、公務員のなかで、いちばんキツイ現場にいる人であることがほとんどです。


小泉元総理は、「人生いろいろ、社長さんもいろいろ」と言っていましたが、それこそ「公務員もいろいろ」なんですよね。
だから、「公務員」というだけで、敵愾心を燃やすのではなく、その人の仕事や人間性を、ちゃんと見てあげてほしい。
僕が接してきた公務員の大部分は、「社会人としての常識を持って、きちんと公のために働く人」でした。
それは、東日本大震災のときに、多くの地域で証明されたことでもあります。


いやほんと、このマンガの後半だけでも読んでみていただきたい。
「ラクな公務員もいるのだろうけど、そうじゃない公務員もいる」
安易に「公務員バッシング」をして快哉を叫ぶ前に、ケースワーカー児童相談所のスタッフのことも、たまにでいいので、考えてみてあげてください。

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