- 作者: 村上福之
- 出版社/メーカー: ナナ・コーポレート・コミュニケーション
- 発売日: 2012/10/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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内容紹介
なぜTwitterもfacebookも無意味なのか?
・なぜTwitterでフォローが多い人は実はカッコ悪いの?
・地震や災害でネットが役に立たないのはなぜ?
・「いいね! 」1万人分は、いくらで買える?
・偽装されるYoutubeの人気動画、その仕組みと値段は?
・なぜ1日でつくったサイトが150万円で売れたのか?
・なぜソーシャルの力だけで義捐金が3日で280万も集まったのか?
・だれが、モバゲーやグリーで遊んでいるのか?
◆はてなブログのブックマークでは常に上位をキープ!
◆2010年、アルファブロガーアワード受賞!
総アクセス2200万PVをたたき出した エンジニアブロガー村上福之総裁の
「ソーシャル蟻地獄に落ち込まない思考術」
この本、書店でみかけて購入したのですが、決め手になったのは、定価が「本体933円+税」だったことでした。
新書ならともかく、単行本で1000円以内というのは、(200ページ弱とはいえ)買いやすい。
もし1200円だったら、たぶん買わなかったと思います。
細かい話ではあるんですが、こういうのって、けっこう大事なことなのではなかろうか。
僕自身は、「実態より過剰に大きく宣伝されているソーシャルネットワークサービスの実力」に対して、なんだかなあ、とずっと思ってきましたし、この本のオビにあった、
この世には、誰もがウソとわかっていても誰もつっこまない数字が3つある。
1つは、中国のGDP、
もう1つは、デーモン閣下の年齢、
最後のもう1つは、
Facebookのユーザー数だ。
というのを読んで、「いいぞいいぞ、もっとやれ!」って思ったんですよね。
ただ、著者はtwitterを「有効利用」しており、この本そのものが、twitterでの口コミで売れている、ということにも、なんだかなあ、と思うところもあるのです。
「もうええねん」って言っている本人が、そのツールを使い、そのツールの悪口で共感を得て、しっかり儲けてるっていうのは、なんかもうすごく商売上手なのか、それとも大嘘つきなのか。
まあ、ソーシャルネットワークサービスって、「フォロワーがいないと、悪口すら誰にも届かないサービス」ではあるんですけどね。
著者は、「フォロワーは買える」ことを紹介しています。
ある程度ネット慣れしている人にとっては、「常識」なのかもしれませんが、そういう現実を知らない人のほうが、世の中の多数派のはず。
Twitterのフォロワーがネット上で売り買いされるようになったのは、2010年くらいからです。執筆時点で(2012年8月29日)、アメリカのフォロワー販売サイトを見たところ、フォロワー5000人で43ドル、つまり3800円です。家族4人で回転寿司に行く料金よりもずっと安い値段で5000人分のフォロワーが買えます。
そんなフォロワー、実際には数字が増えるだけで、何の意味もないよ……
僕もそう思います。
しかしながら、『ドラゴンボール』のスカウターのように、「フォロワー数」=「その人の勢力」だと、僕もけっこう考えがちなんですよね、実際は。
フォロワー数が多い人に絡まれると、それだけでちょっと怖い感じがします。
もしそれが「ハリボテ」だったとしても、それがハリボテだと見分けるためには、ちょっとしたコツみたいなものが必要です。
実際は、フォロワー数が多い人には、商売目的などの「めんどうな人」が多いことを僕も経験しています。
でもなあ、こういう「裏事情」を初心者にもわかるように説明してくれる人って、あんまりいないんですよね。
「ネットで発言力がある人」には、「ネットの影響力が大きいことにしておいたほうが、都合の良い人」が多いから。
この本、前半のネット関連の話題の「本音っぷり」も面白かったのですが、感心させられたのは、著者の仕事に対するスタンスでした。
「ネットで仕事をしている人」なのに、カッコ良い「ノマドワーカー!」の対極のエピソードばかり。
「プログラミングは『写経』して覚えろ」とか「パワーポイントでのプレゼンテーションじゃなくて、『動いている実物』を相手に見せろ」とか、言われてみれば「なるほど」ということなのですが、「ライフハックの人たち」は、こういう「泥臭い真実」を教えてはくれません。
著者が独立したときの話。
著者は会社を設立するのに必要な書類をダウンロードして、「面倒に思える箇所は空欄で法務局に出した」そうです。
僕が初めて作った会社の定款や登記書類は訂正印だらけで、原型をとどめていませんでした。登記簿は書き直す箇所が多すぎて、全然、法務局のおっちゃんの指導で書き直しました。非常にカッコ悪い船出です。なんだか書類一つ作れない自分が情けなくなりました。
「あー、あの、すんません。僕、こういうのサッパリわからないもんで」
法務局のおっちゃんは、割り印を押しながら、僕に言ってくれました。
「ええか、これからもな、わからんかったら、人に聞いたらええんや。誰でもなんでも最初からうまくいくもんちゃうんや。人生、勉強やで」
法務局のおっちゃんの一言は、僕の心に残りました。
そんなわけで、僕は「プライドを捨てて、人に聞いたり、頼ったりする勇気」も手に入れました。今までネットなどで調べた知識を聞きかじりして、知ったかぶりで、プライドのみが高かったプログラマーに一つのスキルが追加されました。
こういう「人に聞いたり、頼ったりする勇気」って、大事なんですよね。
でも、自分のこととなると、小さなプライドが邪魔をして、なかなか実行できません。
「教えてください!」と頼めば、大概の日本人は、けっこう気前良く教えてくれるものなのに。
(中には「自分で勉強するのが、本人のためだから」と教えてくれない人もいますけど、僕は、そういう人には、あんまり教わるべきことがないような気がしています)
「いまの時代は、ソーシャルネットワークサービスだ!」というメディアの声を、これまで鵜呑みにしてきた人は、この本を一度読んでみることをオススメします。
「ソーシャルネットワークサービス」は、人と人のとの繋がりを「変えた」のではなくて、「効率化した」だけなんですよね。
正直、著者のように「うまくやる」ことは難しいと思いますし、普通に会社勤めができる人は、真似できないと思いますし、真似する必要もない。
ただ、先ほどのプログラミングの学びかたの話のように「誰にでもできる。でも、(面倒だから)やっていないこと」って、けっこうたくさんあるはずです。
みんなが効率化して、ラクをしようとしているからこそ、「効率化できない、しにくいところ」には、隙間というか、チャンスが生まれる。
「ライフハック」や「幸せになるコツ」が延々とブックマークされているということは、「それで幸せになった人が、どんどん抜けていっているわけではない」ことの証でもあります。
「いまのままでは、生きづらい人」にとっては、突破口になるような閃きが浮かんでくるかもしれない一冊、なんじゃないかな。