琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

【読書感想】オンエアできない! Deep ☆☆☆

オンエアできない!  Deep (ソノラマ+コミックス)

オンエアできない! Deep (ソノラマ+コミックス)

  • 作者:真船 佳奈
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: コミック


Kindle版もあります。

麒麟川島明「これはバラエティという猫をかぶった『報道』だ! 」

“異端のテレビ局"・テレビ東京公認で送る、現役テレビマンの実録コミックエッセイ‼
現役テレビマンの著者が、ADの仕事を通じてテレビの裏側を赤裸々に描いた話題作にまさかの続刊が登場。
前巻からよりスケールアップし、
美術制作や報道局員、アナウンサーといった人気番組を作り上げる様々なスタッフたちの苦悩と悲哀、
果ては“至上のロケ弁"といったよりニッチな裏側まで、大幅な描き下ろし分を追加してとことん描く!
一見華やかなテレビ業界の地味な裏側を通じて描かれる、“働くということ"の真理に迫った内容とは!


 1970年代はじめに生まれた僕にとっては、テレビ業界というのは、まさに「憧れの世界」だったのですが、いま、この時代、ときにこのコロナ禍の時期に読むと、ああ、みんな大変だからねえ、みたいな気分になって、心に響きにくいな、という感じです。
 なんのかんの言っても、著者は厳しい環境に適応してステップアップしているし、愛されキャラなんだろうな、というのもうかがえるし。
 正直、読んでいちばん心に残ったのは、麒麟川島明さんって、本当にナイスガイなんだな、ということと(僕もあの声と競馬予想力が欲しい!)、ロケ弁の話でした。

 ネットでは「テレビ局のいいかげんさ」が叩かれることが多いのですが(恣意的な編集とか、ネットのコンテンツとその権利者に対するぞんざいな扱いとか)、テレビをつくっている人たちの多くは、「びっくりするくらい細かいところまで、ちゃんとやっている」というのも伝わってきます。

 ナレーターの人が「フンコロガシ」のアクセントや、「日本昆虫協会」の「日本」が「にほん」と「にっぽん」のどちらなのかをきちんと確認するよう言ってきて、AD(アシスタントディレクター)たちが、直接「日本昆虫協会」に電話して確認する、という話が最初のほうに出てくるのですが、多くのネットで発信している人たちは、こうして「一次ソース」や「直接取材をする」ということはほとんどないわけです。
 電話が苦手な僕にはできない仕事だなあ、と、つくづく思います。
 あと、「そんなくだらないこと聞いてくるな!」と言われて、心に傷を負ってしまうタイプの人にも難しいですよね。
 僕は電話で相手の切り方が突然だった(と感じた)だけでもしばらくフリーズしてしまうので。

 テレビ局のADって、「めんどくさいことが嫌いな人」には、とてもつらい仕事ではなかろうか。
 派手にみえる世界だけれど、番組づくりというのは、細かい作業の積み重ねなわけですし。

 あと、著者が突然番組収録時の「前説」と任されたときの「過去の不幸な恋愛話」がすごかった。
 いきなり知らない人に、こんな話をされたお客さんたちは、どんな雰囲気になったのだろうか。
 海外ロケに行った際に、「日本人ですよね?」と問われ、あることを頼まれた話も面白かった。
 こんなところに日本製品、って感じだよなあ。

 さらに、はじめてディレクターをつとめることになったロケで、自分の実家を訪問することになったというのも、テレビ東京らしいですよね。そういえば、鷲見玲奈アナ(もうテレ東辞めてしまったけれど)も番組のロケで実家を訪問されていました。
 他の在京キー局よりもお金はないけれど、出演者もスタッフも、体を張ってコンテンツをつくるのを厭わない、というテレビ東京のスタイル、僕はけっこう好きです。
 
 なにかと「悪いこと」ばかりがネットでは指摘されがちなテレビの世界なのですが、「中の人」たちに、少しだけ親しみを感じられる作品です。まあでも、自分たちはこんな環境で仕事をしながら「働き方改革」をニュースとして伝える、なんていうのは、矛盾ではありますよね……それは、厚生労働省で働いている人たちだって、そうなのだろうけど。


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