琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

「ハンニバル戦記」と錯覚される「クライマックス」

ローマ人の物語Ⅱ「ハンニバル戦記」の読みどころ(by 「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」)
http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2006/09/ii__df4e.html

 僕が最初に「ポエニ戦争」のことを知ったのは、中学生くらいの時だったと思います。当時は本当にゲーム関係の雑誌を脳が溶けるほど読み漁っていたのですが、そのなかに「Tactics」というホビージャパンが出していたボードのシミュレーションゲーム(盤の上で駒を自分で動かして遊ぶ戦争ゲーム)の専門誌があったのです。今から考えれば、どんな中学生なんだ、という感じではありますが。
 戦争シミュレーションゲームの雑誌なので、その雑誌では歴史上の戦争についての特集記事が毎号載っていたのですが、ある号に、この「ポエニ戦争」の特集が組まれていたのです。最初は「ポエニ」って、ヘンな名前!とかバカにしつつ読んでいたのですが、読みすすめていくうちに、僕はこのポエニ戦争という大河ドラマ(というふうに書いてしまうのは大変不謹慎だとは思いますが)に、すっかり魅了されてしまったのです。とくに、アルプスを越えて大国ローマを震撼させ、新しい戦術で歴史を変えた名将・ハンニバルのカッコよさといったら!あんまり詳しく書いたら面白くないとは思うのですが、ハンニバルと、その宿命のライバルであった大スキピオとの知略を尽くしての戦いは、まさに「どんな小説よりもドラマチック」なものなのです。
 それ以来、カルタゴハンニバル関連の書籍は見つけるたびに目を通していて、この「ローマ人の物語」でも、「第二次ポエニ戦争(=ハンニバル戦争)」について語られるのを楽しみに待っていました。そして、塩野さんの筆によるハンニバルスキピオ、通商国家カルタゴと市民権の国ローマとの戦いは、僕の期待に十分応えてくれるものでした。

Wikipediaには、ハンニバルに関する、こんなエピソードが紹介されています(後世の創作だという説が有力なのですが)。

ザマの戦いから数年後、エフェソスに亡命していたハンニバルは、使節として同地を訪れたスキピオと再会し、しばし言葉を交わしたというエピソードがティトゥス・リウィウスによって伝えられている。スキピオが史上もっとも偉大な指揮官は誰か、と問いかけると、ハンニバルは、「第1にアレクサンドロス大王、第2にエペイロスのピュロス、そして第3に自分だ」と答えた。スキピオが、ザマの戦いで自分を破っていたら、と問い重ねると、「アレクサンドロスを越えてわたしが史上第一の指揮官になっていた」と率直に答えたという。

 ハンニバルの事跡を知るにつれ、こんな言葉が大言壮語に聞こえないくらい、ハンニバルは偉大な指揮官だったと感じるのです。
 大スキピオは「ハンニバルに学んだ戦術を駆使して」ハンニバルを破ったのですから。
 「三国志」とか「銀河英雄伝説」が好きな人は、ぜひ一度、「ローマ人の物語」のこの巻だけでもいいので、読んでみていただきたいと僕も思います。

ローマ人の物語 (3) ― ハンニバル戦記(上) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (3) ― ハンニバル戦記(上) (新潮文庫)


 ところで、僕は上記のサイトを読んでいて、『ローマ人の物語』という本は、ちょっと損をしているのではないか、と感じました。
僕は全巻読んでいるのですけど、正直、第1巻の「ローマ誕生」までの神話的なところって、あんまり面白くないのですよね。いや、あまりどころか、全編のなかでも、1、2を争うつまらなさです。日本史の教科書の古代史のところと同じで、具体的なエピソードに乏しい分だけ、よほど興味がある人でないとかなりとっつきにくい内容だと思うのです。ローマが形になって、歴史的資料が残っている時代になってくると、感情移入しやすい「人間のドラマ」が描かれていて、圧倒的に面白くなるのですけど。そういえば、僕が歴史に興味を持ったのって、図書館で「日本の歴史」を偶然借りて読んでからなのですが(表紙が赤い昔のやつのほう)、その時借りた巻というのは、ちょうど「関ヶ原の戦い」を中心とした回だったのです。もしあのとき借りたのが縄文時代とかだったら、「遺跡紹介」みたいな内容に閉口してしまっただけかもしれません。もちろん、歴史というのは「つながり」ですから、ひとつの時代を知ればその前後も知りたくなってくるものなのですが、やっぱり「とっかかり」としては、「有史のはじめから」にこだわらずに、歴史上のドラマチックな場面からはじめてみるのも一つの手段ではないかと思うのです。『ローマ人の物語』も、「ハンニバル戦記」をみんなが最初に読んでくれれば、もっと興味を持つ人も増えるような気がします。

 そういうふうに考えれば、こうして「読んでもらうための文章」を書くときに「最初に読み手をひきつけること」というのは、非常に大事なことであるというのがよくわかります。

「観てもらえないクライマックス」(by「活字中毒R。」)http://www.enpitu.ne.jp/usr6/bin/day?id=60769&pg=20051028
↑で紹介した水族館の話のように、書いているほうとしては、「最初は抑えて、クライマックスで盛り上げよう」なんて考えがちなのですけど、読んでいる側としては、数多くのブログやサイトの中からひとつの文章に辿り着いている時点で、すでに気持ちの上では「クライマックス」になってしまっているのです。
だから、「序盤こそが勝負どころ」なのですよね、とくにネームバリューがない場合には。
ゲームにしたって、「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」のようなブランドであれば、序盤がつまらなくても「そのうち面白くなってくるはず」とみんなガマンして遊んでくれるけれど、無名の新作ゲームだったら、すぐに投げ出されてしまうことが多いでしょうし、「タダだから」、読み手の側にとっては「別にムリして読まなくてもいいや」と投げ出されがちなのも現実です。

 なんだか最後は脱線しまくってしまいましたが、『ハンニバル戦記』は、本当にオススメしておきたい本です。☆☆☆☆☆

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