琥珀色の戯言

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堀井雄二さんが「至高のゲームデザイナー」であり続ける理由

僕はずっと疑問だったんですよ。
なぜ、「堀井雄二」という人は、こんなに長い間、ゲームデザイナーの頂点に君臨し続けていられるのだろう?って。
堀井さんが『ラブマッチテニス』でデビューして、『ポートピア連続殺人事件』が(マイコンで)大ヒットしたのは1983年。
ドラゴンクエスト』が最初にファミコンで出たのは1986年。

ハード面でもソフト面でも進化の速いゲーム業界ですから、どんどん「新しい人」が出てきてもおかしくないはずなのに。
実際にテレビゲーム業界の黎明期から、生き残っている人というのは、そんなに多くはありません。

先日、『ゲームセンターCX』#106「堀井雄二解体新書」を観て、その「秘密」の一端がわかったような気がしましたので、ちょっとだけ御紹介します。
この回は、堀井さん本人と、長年の盟友である、さくまあきらさん、中村光一さんへのインタビューで構成されていました。


堀井雄二さんの話

(『ドラクエ』のなかで、思い入れのある作品は?)


『3』は思い入れがありますね。うまくまとまったな、っていう。
あと、『5』はプレイヤーを本気で悩ませようと思ってシナリオを書きました。

(『ドラクエ9』に関して)


軽く人と関わりたいという時代の空気から「すれちがい通信」を発案しました。

さくまあきらさんの話

彼(堀井雄二)は徹底的に人の意見を聴くタイプなんでね。僕がパソコンのひらがな入力ができなくて文句を言っていたら、『オホーツクに消ゆ』はコマンド選択方式になった。

 とにかく細かいんですよ。何十センチもある設定を書いてくるんです。ゲーム作りに関しては、絶対にサボらない。

 手先が器用で、ゴルフ場みたいなゲームを自分で立体的につくるんですよ。自分で模型をコツコツと。
 文章はうまいですよ。泣かせる文章って言われてた。
 文章が書けて模型がつくれるっていう両方の才能を生かせるっていう職業は、当時なかったんですよ。
 そこへ、マイコンのブームがやってきて、彼の両方の能力が必要とされるようになったんです。
 時代が彼を呼んだんでしょうね。

小池一夫劇画村塾での教え)


簡単だけど深いものがあるんですよ。
「キャラクターは脇が立てる」
小池師匠の教えは、この一点張りなんですよ。


ドラクエ1』では、主人公は自分では「勇者」だと一言も言ってないんですよ。でも、まわりの人たちが、「さすらいの勇者さま」と立てている。
こういうところに小池一夫理論がちゃんと入っているんです。

堀井雄二の才能とは?)


まず人の良さでしょうね。
人に気をつかうし、僕らの仲間では「泣き寝入りの天才」って呼ばれているくらい、仕事を断れないので有名なんです。


中村光一さんの話

 堀井さんは、仕事以外に「息抜き」で、ものすごい数のゲームをやっているんです。

堀井雄二の才能とは?)


 絵もけっこうデザインもできますし、その上でシナリオを書くことができて、『ドラクエ』なんかでも、戦闘のバランスのデータを堀井さんがつくったりするんですよね。そういう数字の能力も持っていて、ゲームをつくるのに必要なすべての能力をお持ちなんじゃないかな、って。


そして、堀井さんが「ゲームづくりでいちばん大切にしていること」。

 とにかく、「わかりやすさ」を大切にしています。
 みんな、マニュアルとか読まないでしょ。
 わかりやすくて、なんとなくやってみたくなるように。出だしはとくに。


ちなみに、堀井さんは、マイコンの『ポートピア連続殺人事件』『軽井沢誘拐案内』では、すべてのプログラミングもひとりでやっていたそうです。
いまのゲーム業界では、グラフィック、サウンド、プログラミング、シナリオなどが「進化」のあまり専門化・細分化していて、「ひとつのゲームの全体像」を見渡せる人というのは、ほとんどいなくなってしまっているのではないかと思います。
本来は、それをやるのが「ゲームデザイナー」の仕事なのでしょうが、「自分ひとりで、ひとつのゲームをつくりあげた経験がある人」というのは、今の若いゲーム業界の人には、そんなに多くはないはずです。
堀井さん(あるいは僕)がテレビゲームの魅力にとりつかれた「マイコンゲーム黎明期」には、「ひとりでつくったゲームが、そのまま商品化されて、お金を稼げる時代」があったのです。
(いまのiPhoneのアプリには、少しそういう「雰囲気」があるかもしれません)


ずっと堀井さんが「頂点」にいるのは、「ゲームを作るために必要な才能のすべてをバランスよく持っていること」そして、「実際に自分ひとりでゲームをつくる経験をしていること」という才能・経験の両輪がああるからで、『ドラクエ』がヒットし続けているのは、「ネームバリュー」だけではないのです。
そして、いまのゲームの諸要素の「専門化・細分化」という流れをみると、今後、堀井さんのような「ゲームデザイナー」が登場してくるのは、かなり難しいのではないかと思います。


この番組の最後で、「堀井さんにとって、ゲームとは何ですか?」という質問がありました。

堀井さんにとってのゲームとは、「可能性を秘めたインタラクティブなメディア」なのだそうです。

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