琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

TIME/タイム ☆☆☆☆


内容(「キネマ旬報社」データベースより)
ジャスティン・ティンバーレイク主演のSFアクション。科学の進化により人類が老化を克服し、“時間”が通貨として世界を支配する近未来。貧困層の青年・ウィルは、目の当たりにした不合理な社会システムに疑問を抱くようになり…。

予告編をみて、マンガ『イキガミ』みたいな話かと思っていたのですが、「突然死んでしまうことのドラマ性」を追求した作品ではなくて、「格差社会」を描いたSFサスペンスでした。
「時間」=「余命」が通貨となった世界というのは、ありがちな設定のように思われるのですが、「余命」がはっきりと見えて、しかもそれを他人とやりとりてきるというのは、けっこう緊張感がありますね。
「そんな大盤振る舞いしないで、もうちょっと自分でキープしておけよ!」と主人公たちには言いたくなりますし、あんなに簡単にやりとりできるんだったら、人と握手なんてできないだろうな、とも思いますけど。


「持てる者たちが、持たざる者たちの時間を搾取している」というのは、ある意味「資本主義そのもの」ではあります。
この映画の前半部分をみながら、「で、その『黒幕』は、いつ登場してくるのかな」と考えていたのですが、「わかりやすいボスキャラ」を作らなかったところが、この映画を「ありがちなハリウッドのサスペンス」から、頭一つ面白くしているのではないかと思います。
考えようによっては、『俺たちに明日はない』をやりたかっただけの、消化不良映画」でもあるのかもしれませんけど、「消化不良であることが、この映画のフックになっている」と僕は感じました。


「時間持ち」=「悪」というステレオタイプの描き方がされているようで、「急に時間を分けてもらった人間が、自分の生活のペースを乱して破滅していく姿」であるとか、「体制側につき、自分と同じだった「弱者」を売ることで、生き延びようとする『元弱者』」とか、「革命なんて、そう簡単にできるようなものじゃない」ことも描かれています。
この映画で描かれた「革命」は、果たして、人間を幸せにするのだろうか?
そんなことを考えてしまいました。


途中で、ヒロインが「人間に永遠の命なんて必要ない」って言い出す場面は、「そりゃちょっと唐突すぎないか、若気の至りとはいえ……」と思ったんですけどね。
僕個人としては、まだ死にたくはないし、「死ぬこと」を受け入れるのは怖い。
「死があるから、生を輝かせることができる。だから限りある命のほうがいい」でも、「とりあえず、いま死ぬのはイヤ」
こういう人の「生命観」ほど、アテにならないものはないと思います。
「限りある命」っていうのは、「いま死ぬかもしれない命」のことなのだから。


まあ、「永遠の命」というのは現時点では夢物語ですから、悩むだけ時間のムダ、ではありますが……


この手の「ありがちなSFサスペンス映画」で、最近観たもののなかでは、けっこう楽しめる作品でした。
「100万年でも、100万人で分ければ、たったの1年。それで何が変わる?」
「時間」に限らず、より多くの人に分け与えることの意味みたいなことを、考えさせられる映画でもありました。

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